自戒、点検、内省

終わらない反省会をしよう

仕事が楽しいかどうかを一括りに悩まないようにしてその奥にあるいろんな気持ちを細かく手にとってみる

はじめに

「この仕事、楽しいですか?」—シンプルなこの質問に、実は最近少し困惑することがあります。楽しいを大事にする現職に入って11年と数ヶ月。さまざまな立ち位置でさまざまな課題にひたすら向き合ってきました。楽しくないというのは違うのですが、一言で「楽しい」と表現することに、どこか心のひっかかりがあるのです。

この記事では、わたしが「楽しい」という言葉の奥にある、より細やかな感情や価値観に目を向け、自分なりの仕事の意義を見出していく過程を共有したいと思います。これは、決して「楽しい」を否定するものではなく、そのグラデーションを深く理解し、自分自身の価値観の地図を再構築する試みです。

「楽しい」の不在に気づいたとき

普段からの、大きなボディーランゲージで、太い声で話し、盛んに笑うという動きから、「なにやら楽しそうに仕事にのめり込んでいる」と思われているかもしれません。実際、充実感や達成感を感じる瞬間はたくさんあります。しかし、それらを一括りにして「楽しい」と表現してしまうと、こぼれ落ちてしまう大切な感情や価値観があるような気がしています。確かに時間を忘れて没頭することはありました。問題が解決したときの安堵感もありました。しかし、それは「楽しい」という言葉では捉えきれない感覚です。

「楽しい」は素晴らしい言葉です。多くの人の活力源となり、仕事への情熱を支える重要な感情でしょう。わたしも決してその価値を否定しているわけではありません。ただ、今のわたしは、その言葉の先にある何かを探っているのかもしれません。

過集中と報酬系のループ

仕事で経験する過集中の状態を振り返ってみると、時間が飛ぶように感じるときがしばしばあります。特に「うまくいかない...よくわからない...表現しえない...あっ、みえた!!」という波が訪れるときの高揚感は確かに存在します。この状態は、フローや没入といった純粋なポジティブ感情というより、脳内の報酬系が刺激され続けている感覚があって、わりとランダム報酬の虜になっている節もあるんですが、さておき、しかし、この没入状態から得たものも確かにあります。複雑な問題の構造を把握する力、長期的な視点で物事を捉える視野の広がり、そして何より、自分の限界を少しずつ押し広げてきた実感。これらは表面的な「楽しさ」とは異なる、深い達成の感覚をもたらしてくれました。

「充実」「意義」「貢献」という言葉

実感として「楽しい」が湧かないなら、自分の仕事への向き合い方をどう表現すればいいのでしょうか。

振り返ってみると、わたしが仕事に見出してきた価値は以下のようなものかもしれません。

  • 充実感: 難しい課題に取り組み、解決に向けて前進しているとき
  • 意義: 自分の行動が組織や創作者にとって価値をもたらすと感じるとき
  • 貢献: 誰かの役に立ち、問題解決の一部になれたとき
  • 達成感: 長期的な課題がついに解決したとき

これらの感覚は「楽しい」という単語では表現しきれないかもしれませんが、仕事を続ける上での大切な動機になっています。

「石のスープの石」としての存在

このブログでも度々自分のことを「石のスープの石」と表現してきました。自分自身は石に過ぎないが、その存在によって周囲の人々が様々な具材を持ち寄り、結果として素晴らしいスープができあがる—そんなメタファーです。

この「黒子」のような役割には、華やかさはないかもしれません。しかし、縁の下の力持ちとして全体を支える充実感があります。そして、最終的に生まれる価値に対して、静かな誇りを感じることができるのです。

会社の理念との向き合い方

この自分自身の「楽しい」へののひっかかりは、「創作活動をもっと楽しくする。」という現職のミッションの一節にフィットしないのではないかと考え込むこともあります。

この一節を捉え直すと、自分自身が楽しむことだけでなく、創作者たちの楽しさを支える基盤づくりという解釈もできます。わたしのような役割は表舞台で「楽しい」を体現するというより、その「楽しい」を可能にする土台を作る部分なのかもしれません。

そう考えると、自分と会社の価値観の根っこには乖離は無いのでしょう。ただ表現や感じ方の違いがあるだけなのです。

自分の価値観を大切にする

「楽しい」を無理に感じようとする必要はありません。自分にとってしっくりくる価値観—充実感、意義、貢献、達成感—を大切にしながら、これからも仕事に向き合っていきたいと思います。

時に周囲の「楽しい」という言葉に違和感を覚えることがあっても、それは自分の感じ方が間違っているわけではないのでしょう。むしろ、「楽しい」だけでは語れない深い関わり方をしているからこそかもしれません。