自戒、点検、内省

終わらない反省会をしよう

ビジネス用語"越境"は実は相手の境界は超えてないし土足で踏み込むわけでもない

ビジネスの最前線で「越境(クロスボーダー)」という言葉を耳にする機会はよくあります。

「役割の枠を超えて動こう」「部門の壁を越えよう」。

スローガンとして勢いがありわたしとしては好きな概念でですが、日々の業務における規律や責任分界を大切にしている人ほど、この言葉をスローガンではなく字句通りに受け取ってしまい、戸惑うこともあるのではないでしょうか。

「越境って、他チームの仕事に口を出していいということ?」 「決められた分担を守らなくていいの?」 「専門外の領域に踏み込んだら、迷惑がられるのでは?」

もし「越境」を、他人の家に土足で上がり込んで勝手に家具の配置を変えるような行為だと思っているとしたら、それは大きな誤解です。

「土足で入る」ことと「越境」の違い

そもそも領域を分つのはおかしい。Whole Teamだ。それは理念として、理想として同意するものですが、いったん脇においてですね、人々の心としてもまた実務の定義としても役割分担という概念の現実は根強いです。当事者間で「ここまでは自分たちの役割」という棲み分けのコンセンサスがだいたいは暗黙的に存在しています。

そのため、それぞれのドメイン(領域)や専門性を相互に尊ぶことは越境を語る上での大前提です。なぜなら超える何かがあってこその越境だからです。

この前提を大事にするよという表明の上でいうと、誰しも、自分の専門領域やチームのやり方にプライドを持っています。そこにリスペクトもなく、外野から「もっとこうすべきだ」と批判だけしたり、許可なく手を出したりするのは、単なる「干渉」であり「領空侵犯」です。これは組織の不和を生むだけです。

私たちが大切にしたい「越境」は、そうではありません。

それは、「ポテンヒットになりそうなボールを、お互いに声を掛け合って拾いにいく行為」に近いものです。

誰も拾わない「グレーゾーン」こそが主戦場

組織図上の役割分担が明確であればあるほど、どうしても「隙間(グレーゾーン)」が生まれます。

「これは開発の仕事? それとも企画の仕事?」

「このトラブル対応は、営業の責任? カスタマーサポートの責任?」

こうした「双方の義務と責任が及ぶ境界線」で問題が起きたとき、悪い意味での縦割り組織では何が起きるでしょうか。 「それはそっちの仕事ですよね」という仕事の押し付け合いです。

しかし、本当の「越境」ができるチームは違います。 明らかな自他の境界線の間の隙間上の課題を見つけたとき、「これは『わたしたち』の問題だ」と捉えることができます。

「あなたの問題」ではなく「わたしたちの問題」へ

越境の本質は、主語の変換にあります。

  • Before(分断): 「あなたたちのチームで、なんとかしてください」
  • After(越境): 「これはわたしたちの課題として、一緒に解決策を考えましょう」

相手の領分を荒らすのではなく、「双方の責任が及ぶ場所」に対して、主体的に関わりに行くこと。 「ここは私が手伝うので、ここはお願いできますか?」と、互いの背中を預け合うこと。

超えるべきは相手側の境界ではないんです。その手前にある隙間に踏み入れるという、自分と隙間とにある自分の境界を超えるということです。

動的にかたちを変える隙間に対応する

どれだけ棲み分けやデスクリプションを規定したとしても、隙間は無くなりません。なぜならビジネス環境は刻一刻と変化します。また隙間は解釈からも生じます。つまりそこに不定形にあり続けるものなのです。

対策として「線引き」を継続的に見直すというのはもちろんのこと、隙間に落ちるものがでてくる現実を直視して、そのときにお見合いや押し付け合いによる失点を防ぐことにエネルギーを使いたい。

  • リスペクトを持って相手の領域を知ろうとする。
  • 落ちているボールがあれば、自分の担当でなくとも「拾いましょうか?」と声を上げる。
  • 成果をチーム単体ではなく、全体の勝利として喜ぶ。

そんな「越境」が当たり前になったとき、私たちの組織はもっと強く、もっと速く動けるようになるはずです。

恐れずに、でも礼儀正しく、自分側の線を超えて隙間潰しをしていきましょう。